赤の疾風


…本当は、幼くして孤児になり、そのせいでこれまで酷い扱いを受けてきたことも言いたかった。

容貌のせいで殺されかけたことも本当は、萬天に聞いてほしかった。


だが、そんなことをすれば…


―――萬天殿は…、わたしから離れてしまうやも…。


失ってしまうかもしれない。


だから、梳菜の話はそこで終わった。

最中、萬天はずっと真剣に、梳菜の話だけに耳を傾けてくれていた。



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