赤の疾風


「……感謝…か。」


萬天の瞳が、少しだけ伏せられた。

何かの状況を、頭の中に思い浮かべるように。


「たくさん、苦労を抱えていてもなお、梳菜は人のために尽くしたいのだな。
どんなに、酷い仕打ちを受けようとも…。」

そこでやっと、梳菜と目が合った。

萬天の問いかける眼差しを見つめたあと、梳菜はハッキリと言う。


「人様に喜んでいただけるのは、とても嬉しいことではありませんか?」


あなた様も、そうでしょう?と。


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