赤の疾風


―――


「……ぶ、ぇ……!!
うぐ…っ、う……うぅぅ……!!」


約束の期日を迎えたその時、梳菜は、

宿屋の一室で、病床に臥していた。


昨日、萬天から松ぼっくりを受け取ったときから、酷い胸の痛みと激しい嘔吐に襲われ、その苦痛は今も続いていた。

食事も喉を通らず、頻繁に桶に吐く。
日頃の疲れが出たのかと思えたが、それにしては症状が尋常ではなかった。


「梳菜っ、しっかりおしよ!
今、お医者様が来てくださるからね!」

女将の吉代(きつよ)も商いどころではない。
ずっと梳菜の傍で看病をしていたのだ。


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