必要性
明らかに、その瞳には軽蔑と怒りが入り混じっていた。
「…確かに、おまえが家庭環境に問題があるのは、聞いていた。でも…、家族に刃物を向けられるなんて、よっぽどじゃないのか?」
「はもの…?」
私が、呆然と彼の瞳に脅えているうちに、彼は確認ともとれる、質問をしてきた。
「…おまえのその背中。事故じゃないだろ」
「………………」
彼の言葉を否定する言葉が見つからない。本人が見ても、同じことを思ったんだから。
でも、いくら私が幼い頃から、父方の祖父母や父に暴力を受けていても、刃物を向けられた覚えは――――ない。