もう一度 笑って
「あ……大輔くん!
そのチョコはっ」

智世が朝倉の腕にそっと触れて
チョコを食べようとする手を止めた

すでに3個目のチョコを
朝倉が口の中に放り込んだ後だった

「ん? なあに?
智ちんも食べたい?」

朝倉がにっこりとほほ笑んで
智世の口の中にチョコを入れた

たまたま口を開いていた智世の口内にも
高級チョコが入った

「美味しいっ!」

智世が目を細めて幸せそうな顔をした

「だろっ!
金持ちの食いもんは違うよな~」

朝倉がまたチョコを口に入れる

「そうじゃなくて!
このチョコは……」

智世が言いにくそうに
口を閉じてから

あたしの顔をちらりと見た


『大輔くんに言っても平気?』
智世の顔に書いてあった

心配してるわけ?


海にあげるはずのチョコを
食べられちゃって
あたしがショックを
受けてるとでも思ってるの?


それとも心の奥底では

大輔くぅん、ありがとう!
そのチョコで
彼氏をとられるとこだったのぉ


…と、でも思ってるわけ?

あたしは朝倉を睨んだ

これ以上ないくらい
鋭い目にして
朝倉の顔を睨みつけてやった
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