もう一度 笑って
「ねえ、出かけたいんだけど」

ソファに座って雑誌を読んでいたあたしは
ダイニングテーブルにパソコンを置いて
仕事をしている秘書男に
声をかけた

「どこにですか?」

「病院」

「え?」

田所が驚いた顔をした

「妊娠したとか?」

「するか、馬鹿」

田所がほっと肩の力を抜く

田所はあたしという人間を
どう理解しているのだろうか?

男好きで
遊びまくっている女とか?

「友人の見舞いに行きたいの
もちろん女友達
心臓が悪くて手術をした
あんたがあたしの携帯を奪ったから
手術が成功したかどうかも
わからない」

「調べて結果をお教えしましょう」

「それだけ?」

「ええ、外に出ることは禁じられてますから」

あたしはため息をつくと
雑誌に目を戻した

つまらない

智世が心配なのに
見舞いにも行けないなんて

朝から晩まで
見張りがいて

逐一、父親に連絡をしている

あたしの行動結果を

信用されてないって
つらいよ
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