もう一度 笑って
「ほお……」

父親が、口を緩めて笑った

「だが、娘はお前にはやらん
大きな商談が待っているんだ」

「ええ、知っています
その商談は諦めたほうがいいですよ」

「何?」

「見合い相手の男性、どんなに待っても来ませんから」

海がさわやかな笑みを浮かべた

そしてあたしに視線を送ると、また手を差し伸べた

「樹里、行こう」

あたしは足を一歩踏み出すと、海の手をとった

「社長! 先方と全く電話が通じないのですが……」

「ね? 言ったとおりでしょ?
政治家に睨まれた企業は潰されるって覚えておいたほうがいいよ」

海はあたしの肩を抱くと、レストランの個室を出て行った

「社長! 彼は…いったい?
いいんですか?」

愛人の声が室内から響いてきた

「構わん、放っておけ!
急ぎ、社に戻る
元安議員と連絡をとるんだ」

父親の声が聞こえた

なんで父親は焦っているの?
意味がわからない……

海はなんで知っているの?

父親の弱点を
そしてなんで見合い相手が来ないってわかってたの?

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