もう一度 笑って
「もうあんなことすんなよ」

ぼそっと朝倉が言った

「あんなこと?」

朝倉が畳の上に座って
あたしの顔を見つめた

「智世を苦しめるな」

苦しめるな?

智世の存在自体が
あたしを苦しめてるのに?

世の中の苦しみや痛みなんか
知りませんみたいな顔して

ちょっと嫌なことがあれば
すぐに男に守ってもらえると思っている

教師も
クラスメートも

何かあると智世を庇うのよ

さっきだって
智世は呼び出されずに海と
仲良く腕を組んで
帰って行ってた

生徒指導室から
あたしは見た

それなのに
あたしはずっと
生徒指導室に閉じ込められていた

事実を話せとか言ってさ

話したって信じないくせに

誰もあたしの気持ちなんて
わかってくれないんだ

目の前にいる
同類の寂しさと持っていると
思ってた男も

所詮
智世の味方なんだ
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