もう一度 笑って
「もう少しだから
やっと待ち望んだ日がくるんだ」


「だからってお前が死ぬぞ」


「階段が落ちたのが
まずかったな
あそこで血を流し過ぎた
もったいねえ」


朝倉が真っ青な顔で
苦笑した


「小久保を守ったんだろ」


海が近くにあった椅子に腰をおろした


え?


急にあたしの名前を出すから
あたしの心臓が
激しく鳴りだした


「智世が悲しむからな」


朝倉が口を開く


海の前で朝倉は
堂々と『智世』と呼び捨てにした


人前では『智ちん』って呼んでいるのに


何なの?


海と朝倉と智世って
どんな関係なのよ


意味がわからない


「もう大丈夫だ」


深呼吸をした朝倉が
立ち上がった


顔色は悪いが
足取りはしっかりしていた

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