ネタも尽きたしお金もない。


歩く事ができたらまだよかったのかもしれない。

だが、看板を持ったままその場所から動く事も許されず。


あー、黒スプレーしてたら、大変な事になってたわー。


と、少し前向きなことを考えてみるが、だんだんと足の先から順番に感覚がなくなっていくのがわかる。


・・・あと2時間・・・



なるべく時計を気にしないように。

寒いことも考えないように。


・・・頭の中で歌でも作ってみよう。



とにかく、この寒さを耐え抜いた。





時間になり、仕事が終わる頃には止んだ雨。


どんなに辛い状況で仕事してたって、優しい声はかけてもらえない。


・・・これが、普通なんだな。きっと。


ずぶ濡れになったスーツ。

着替えを持ってきたわけでもなく。

だからと言って、服が買えるような場所もなく。

濡れたまんま、電車に乗り込みましたとさ。



・・・周りからは失恋でもしたのか、とか思われてんのかな・・・なんて考えながら。


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