俺様!何様?執事サマ!?
――――………
私の嗚咽がおさまってきて、櫂が腕をゆるめた。
すぐに離れる。
「櫂、ごめ……」
「………なんであやまるん?」
気持ちは返せないくせに、それに甘えている自分が嫌だ。
私が答えられないでいると、櫂は顔を近づけてくる。
「……愛ちゃん」
囁くように私の名前を呼ぶと、にこ、と笑顔を見せた。
「俺、愛ちゃんが思ってるほどイイコちゃうねん」
「……え……?」
「爽のことで愛ちゃんが泣くんも、こうやって近づくと爽とおんなし匂いがするんも、ほんとは、嫌や」
私の首あたりを嗅ぐように鼻を近づけたかと思うと、瞬間、ちくりとした痛み。
体が反応する。
櫂の唇が離れたところに、キスマークが、できた。