許嫁
呆然と携帯を取り出し、母に電話する。


電話に出れないという機械音。


なんとか母と連絡を取らなければという思いが頭の中を巡る。


「あら」


大家さんの声に振り返るとそこには背の高い男の人が立っていた。


「お迎えにあがりました。凛様」


凛・・・様????


見知らぬ男の車に乗せられ早5分。


大家さんが言うには昼間お母さんの引越しの手伝いをした一人だそうだ。


お母さんの行き先を知るための唯一の手掛かり。


悪い人でもなさそうだし、言われるがままに車に乗り込んでしまったことを後悔し始めた。
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