許嫁

「あら、凛、元気？」


何事もなかったかのように言う母に怒りを通り越して呆れる。


「『凛、元気？』じゃないわよ。これはどういうこと？」


「どういうこともこういうこともないわよ？健太君から聞いてない？」


手際が悪いのね。と付け足す。


「とりあえず紹介するわ。この人は真紀子。現会長で、私の親友で、健太君のお母さん。で、凛ちゃんの将来のお養母さん」


そういってずいっと前に真紀子さんを押し出した。


「聞いていない」って言おうとした私を黙らせる。


「初めまして。今紹介されたとおりなんだけど、亡くなった主人の代わりに会長をやってる健太の母で真紀子です。凛ちゃんには、『真紀子ママ』って呼んでほしいな」


まともそうに見えた健太の母も私の母と同類らしい。