許嫁
「じゃあ、お兄さんに任せなさい」


「誰が兄だよ。それに、任せろって、どうする気だ」


胸を張る春樹に一抹の不安がよぎる。


「こうするの。凛ちゃん」


「・・・バカ」


予想どおり、クラス中が注目するような大きな声で凛を呼ぶ。


呼ばれた当の本人はまず春樹を見てそれから俺を見て顔を曇らせる。


「何?」


そう答えたものの一向に動こうとしない凛は、あからさまに俺を意識している。


「健太、話があるって聞いてあげて」


全くもって大きなお世話だ。


凛は仕方なく席を立ちこっちへ向かう。


これだけクラスの注目を集めれば、無視できないのも当然と言える。
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