許嫁
「話したいことって何?」


さっさと済ませてほしいという態度に苛立ちはさらにつのる。


「別にない。春樹が勝手に言っただけだ」


「あっそう。じゃあね」


いざ、話そうとすると言葉が見つからない。


自分が悪いわけではないから、謝るのもおかしいし、だからと言って喧嘩したわけではないから、仲直りもおかしい。


「今日暇?」


仕方ないなぁ。と、言いたげに春樹は提案する。


「今日?」


「うん。今日」


「一応、暇だよ」


本当は勉強をしなければいけないけれど、あまり家には帰りたくはない。


その原因がここにいることは言うまでもない。
< 51 / 123 >

この作品をシェア

pagetop