許嫁
「あの、監督様」


おずおずと手を挙げて見る。


「何かしら」


私が次に発する言葉が予想できるのだろう。


雪乃は両手を腰にあてがったまま振り返る。


「あのさ、私の名前、5ヶ所もあるんだけど・・・」


『脚本』『シンデレラ役』『衣装係』『大道具係』それに『助監督』。


さすがに多すぎだ。


「却下。役はみんなの推薦だし、決める時にいなかった凛が悪い。そのうち脚本はもう終わってるわけだし、実質4つよ。」


「ちょっと待って、監督が雪乃なら、助監督は春樹でいいんじゃない?」


委員長2人で監督と助監督ならしっくりくる。


「う~ん。それもそうね」


なんとか、助監督の名前だけはすり替えてもらったものの、これ以上は譲れないからね。


と、訴える雪乃に了承するしかない。

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