許嫁
「ちょっと、よろしいかしら」


「えぇっと・・・」


あれだけ何癖つけられているのに名前を知らない。


「高宮桜子ですわ」


大きな目をさらに見開き、軽蔑するように言う。


自分のことを知らなかったことがよほど気に入らないらしい。


「雪乃、ちょっと抜けるね」


『ダメ』という声が聞こえる前にその場を去る。


いつもの御取巻きがいないところを見れば、真剣な話なのだと想像がつく。


連れてこられたのは、空き教室。


学祭で使用しない机とかがぎっしり詰められている。


わずかな隙間は、サボるのにはもってこいだ。
< 74 / 123 >

この作品をシェア

pagetop