許嫁
「健太様今よろしいでしょうか?」


いつもと違う様子に、いつもどおり逃げるのはやめて彼女に向き直る。


「あぁ・・・場所、変えるか?」


「お願いします」


周囲を見渡せば、注目の的になっている。


彼女のこれからの発言を考えれば、場所を変えてやるのがせめてもの礼儀だと思う。


「お聞きしたいこととご報告があります」


校舎裏のベンチに並んで座ると、桜子は口をひらく。


「まずは、ご報告を、本日私は婚約いたしました」


桜子はそう言ってほほ笑んだもののどこか悲しげだ。
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