許嫁

「おめでとう。慎太郎さんとだっけ？」


おめでたいことなのかはわからないが、つい口からこぼれてしまった。


桜子と慎太郎の婚姻はもともと噂があった。


財力があるとは言え、成り金と軽んじられている真田家。


一方、家柄の良い高宮の家計は火の車。


双方の利害が一致する形での婚姻。


『おめでとう』と言っていいのかわからない。


「ありがとうございます。私の卒業を待って入籍することになりました。近々正式に健太様とご家族の方々にもご連絡をさせていただくこととなると思います」


真田家は石神グループの傘下事業を営み、最も信頼する家のうちの１つだ。


「幸せにな」


自分にはそれしか言ってあげられない。