許嫁

「はい」


頷いて、顔をあげた桜子の顔は穏やかに笑っていた。


桜子は恥ずかしそうに笑った後、立ち上がって俺の前に立った。


「ご存じかと思いますが、私は健太様が好きでした」


「あぁ」


知っていた。


告白しようとしてくれていたこともわかっていた。


知っていて避けていた。


妹のように思っていた桜子との関係が崩れてほしくなかった。


「初恋だったんです・・・妹のように思われていたことも知っています」


「ごめん」