暦屋 [ss]
 暦屋が何処にあるか私は知らない。ただ、そこにあるのだ。そして、おじさんはただそこに居るのだ。

「暦に従うことがワタクシの使命なのです」

 おじさんはいつかそういった。確か私が暦屋だから暦を遅くしたり速くしたりできるのでしょう、と尋ねた時だ。時は変える事ができない。時には過去と現在と未来があって、私がいるのはもちろん現在なのだ。現在は永遠に現在で、それを認識する必要が私にはある。暦は自由ではない。

 暦屋になるには、暦屋になるためにはその血族でなければいけない。その血族におけるルールの中に暦屋になるための基礎を小さい頃から築いていくのだ。

 私は暦屋の血族ではない。

 私は、人だ。

 でも全部風の噂。
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