暦屋 [ss]
「思い出したヨ」
「大切なモノを、ですか?」
「そうだヨ」
「なんなのでしょう」
「私はイチ月ヨン日に” ”をなくしたんダ」
おじさんはふふふと笑った。うんうんと頷いた。シルクハットを白い手袋をした手でちょっと直した。
おじさんは私に私の大切なモノを返してくれた。それはとても大切なモノだった。とても尊いものだった。でも、私は今日の今日まで忘れていた。暦屋は丸一日かけて私の大切なモノをちょっとずつ返してくれた。
終わるまでにおじさんの瞳は七百壱拾九も時を刻んだ。
暦屋のおじさんと別れたとき、私は手を伸ばしてシルクハットに触れた。
「ありがとう、暦屋のおじさん」
大切なモノを貰った私は現在を認識した。
fin.
「大切なモノを、ですか?」
「そうだヨ」
「なんなのでしょう」
「私はイチ月ヨン日に” ”をなくしたんダ」
おじさんはふふふと笑った。うんうんと頷いた。シルクハットを白い手袋をした手でちょっと直した。
おじさんは私に私の大切なモノを返してくれた。それはとても大切なモノだった。とても尊いものだった。でも、私は今日の今日まで忘れていた。暦屋は丸一日かけて私の大切なモノをちょっとずつ返してくれた。
終わるまでにおじさんの瞳は七百壱拾九も時を刻んだ。
暦屋のおじさんと別れたとき、私は手を伸ばしてシルクハットに触れた。
「ありがとう、暦屋のおじさん」
大切なモノを貰った私は現在を認識した。
fin.