water song(みずうた)
「リールさん、大丈夫ですか?」

セリが心配そうに覗き込んできたが、私はまだ返事をする事が出来なかった。

「…ふぅ、だ、大丈夫」

だと思う。

何とか呼吸を整えて、返事をする。

どこを走ったか知らないが、私達は屋敷の一つの扉の前にいた。

「ここに、手引きしてくれた人が居るんです。」

走っている途中に、セリから事情を少しだけ聞いた。

屋敷の中のとある人の手引きで、私を助けに来てくれたそうだ。

目の前の扉の中に、脱出口もあるらしい。

勿論、その脱出口は非常時しか使われることはなく、誰にでも開けられるものではない。

開けられるのは、街長とその人位で…。

(って、もしかして…)

走っている間は、そこまで頭は回らなかったけど…。

コンコン…。

ノックの後にセリが扉を開けた。

「遅いな、ミゲルさん、待ちくたびれちゃったよ」

「良いから、早く脱出しよ。話はそれからよ」

扉を開けたそこには、予想通りの、ミゲルさん登場…。

「やっ、リールちゃんさっきぶりー。あの後、セリに呼び出しされてさー」

「だから、話は、あと・あと。街長来ちゃうよ」

軽口をたたきながらも、周りを確認して部屋の中へ。
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