water song(みずうた)
部屋の中の、台の上の大きなツボをミゲルが右向きに少し回した。

「ところでさー、一旦どっか落ち着いた方が良いかなと、ミゲルさんは思うわけなんだけど、どっかにあては有るの?」

「うーん、うちは見張られてるだろうし…」

唇に人差し指を当てながら、セリが唸る。

「あ、リールさん…は、旅人さんだっけ…。じゃダメね。ミゲル、どっか無いの?」

ミゲルは、呆れたようにため息をついた。

「そんな事だろうと思ったよ。仕方ない、ミゲルさんの行きつけの店にでも行くか…。あ、兄貴にバレて無い所にしないと…。アソコ…位かな、でもな…」

歯切れの悪いミゲルに、イライラしたセリがキレる。

「もー、そこで良いから。」

因みに、話している間に、ツボを回して出てきた箱状のものに鍵を差し込み、開いた暖炉の下に隠されていた扉から、部屋は既に後にしていた。

小声で喧嘩し続ける二人。

巻き込んで悪いと思い、服と靴と食料だけ都合してくれたら、一人で街の外に行くと申し出た所、セリに「リールさんは黙ってて」と言われてしまった。
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