water song(みずうた)
「でも、あの頭は、結構強かった」

すっかり、外見と言動に騙され小者だと思っていた。

しかし、狼男にやられ気を失っていたのは、短時間。

覚醒した頭の的確な指示に、狼男も手間取っていた。

「まぁ、そうだったな。」

狼男は、イヤそうに眉間にシワを寄せた。

「変身解かないの?」

「ああ。」

狼男は頷いた。

「寒いし、一度変化すると、月明かりのある内は解けないんだ。
変身するのは、自分の意志で出来るが、解くのは自分の意志では出来ない。
まぁ、方法が無い訳でも無いが、今は特に必要ないしな」

私は炎に手をかざした。

「なんだ、冷えたのか?」

「少し」

「お前、口数少ないな。
煩いよりは良いが。
寒いなら、俺のそばに来い。
毛皮が有るから毛布代わりになる。」

言って、狼男は腕を広げる。

躊躇したが、寒さには勝てず、狼男に寄り添う。

肩に腕を回され、自分と違う体温にドキドキした。

「…名前、聞いて無かったな。
俺はガルン。
お前は?」

私は困った。

(名前…私の名前って?)

色々あって、失念していたが私は、記憶喪失なのだった。

「…わからない」

ガルンは驚いた顔で、こちらをみた。
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