water song(みずうた)
「ほら、またリールさんっ!」

ググッとまた顔を近付けられる。

近すぎて焦点が合わない。

そのまま、頬に柔らかな感触。

ちゅっ。

響くリップ音が、どこか他人事のように耳に届く。

「あまり無防備だと、襲われますよ?」

急いで、距離を取るように立ち上がる私。

イタズラな顔で、私を見上げるセリ。

「はいはい、じゃれあいはそこまで。」

軽薄なセリフとともに、パンパンと手を叩く音。

セリと私の間にあった、奇妙な空気を破る。

「リールちゃんを呼びに行くって来たのに、遅すぎだから見に来てみれば、ミゲルさんを差し置いて、リールちゃんにチョッカイ出さないの。」

「そうそう、早く街を離れないと、捕まっちゃうね」

ゼルドさんの言葉に、ハッとなる私。

幸いな事に、まだ手配されていなかったのか、門は抜ける事は出来た。

けど、門兵がいる所と、今私達がいる場所はそう離れて居ない。

「行こう」

皆に声をかけ、私は水の幕の向こうへと抜けたのだった。
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