water song(みずうた)
「わからないってどういう事だ?」

「そのまま。多分、記憶喪失。」

ふん。

ガルンは鼻を鳴らした。

「不便だな…。という事は、行くあてとかも無いのか?」

頷くと、ガルンはニカッと笑った。

狼のままで笑われると、かなり怖いと思ったのは秘密にしておく。

「人の不幸、楽しい?」

「いや、名案を思いついただけだ。」

私は、首を傾げる。

「名案?」

「ああ。
しばらく俺と一緒に旅をしないか?
俺はお前を気に入った。
駄目だとしても、少なくとも、次の街までは一緒に居てくれなきゃ困るな。
俺は命石(メイセキ)持って無いから。」

因みに、ハイドロ石とオクシィ石、2つ合わせて“命石”と呼ぶ。

砂漠で命を繋ぐ石なのでそう呼ぶのだ。

「わかった。
でも、私は何も出来ない。」

「良いってことよ。
その内何か出来る事も思い出すだろ。
思い出さなくても、何か出来るようになるさ。」

また、わしゃわしゃと頭を撫でられた。

「さて。
普通なら夜の間か朝の涼しい時に移動したい所だが、どうするかね?
現在地も不明なわけだが、ちょっとでも移動しとくか。」

「ガルンは疲れて無い?」
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