water song(みずうた)
変な扇子だ。

あれを何の変哲もないと言い切れるゼルドさんはすごい。

どうやら、中が空洞の構造のようだ。

そして、両端に命石が埋まっているので、器に命石を入れた時のように、扇子の中は、水で満たされる…と。

仕組みは何となくわかったけど、用途…ゼルドさんが荷物から取り出した意味がわからない。

獣は、ジリジリとゼルドさんから距離を取っている。

あの扇子を怖れてるようだ。

チャンスとばかりに、ミゲルが獣の右足を斬りつけた。

ジャリッ。

砂がこすれたような音がしたけれど、獣にダメージがあるように見えなかった。

お返しとばかりに、左足からの一撃を加えられそうになり、慌て後方へ下がるミゲル。

そして、八つ当たり気味にゼルドさんに言う。

「で、それで何するのか、ミゲルさんは疑問だらけなんだけどっ」

「ハイハイ、全く短気は損気ね…」

ブツブツ言いながら、ゼルドさんは扇子の上部に付いていた飾り(?)を外した。

そして扇子を、獣に向かって一振り。

飾りを外した辺りから、透明な光…多分、水…が、獣に向かって飛ぶ。

「水…ですね。水鉄砲?」

セリが不思議そうに扇子を見る。
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