water song(みずうた)
俺は嬉しくなって、リールの頭を乱暴に撫でる。

最近気に入ってる癖だ。

リールの頭を撫でると、何故かとても落ち着いた。リールが確かに存在している事が実感できる。

俺は自分で思っているよりも、リールを気に入っていたようだ。

ふと、妙な事に気づく。

歌を聴く前までは、かなり渇いていた喉が、水をたらふく飲んだ後のように潤っていた。

手足や体から、ここ数日の騒動で澱(オリ)のように溜まっていた疲れが感じられ無かった。

何だコレは。
まさか、さっきのリールの歌でか?

リールにカマをかけるが、本人も歌の効力に気付いていないらしく、お世辞と誤解された。

経験したのが自分だけだし、経験した後でも信じられない事象だった事もあり、リールの歌については保留する事にした。

++++++++++

砂漠の途中で、リールが突然立ち止まった。
あまりにも唐突に立ち止まったので、俺は不思議に思い、リールに尋ねる。

リールが、「あっち」といって指差した方向には、微かに緑が見えた。

緑はオアシスだった。

しかし近付いて判ったのだが…これは、オアシスと呼べるのだろうか…。

オアシスとは、砂漠に疲れた旅人を癒やす憩いの場。
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