water song(みずうた)
「いや…。
お世辞…でないが…まぁ、歌だけでこんな効果が有るなんて、実際体験してみても信じられないし、気のせい…か」

ガルンは首を振り、立ち上がった。

「さて、行くか」

私はびっくりしてガルンを見上げる。

「ガルン、もっと休む。

水も飲んで」

ガルンは首を横に振った。

「いや、両方充分なんだ。
このままでも、後半日は走り続けられそうだ。」

さっきまで私を肩に乗せ、かなりの距離を移動してきたというのに。

「で、でも…」

「大丈夫、大丈夫。」

ガルンはそのまま私に手を伸ばし、肩に担ぎ上げ、荷物を手渡してきた。

昼間だったらともかく、夜のケムクジャラガルンは私には止められない。

私は渋々従った。

ガルンは手早く火の始末をし、私を肩に乗せて、軽快に走り出した。

++++++++++

月の砂漠を、銀の獣が駆けて行く。

それはまるで、昔語りのように幻想的な光景であった。
< 16 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop