water song(みずうた)
水の気配が濃厚にする。

オアシスは、もうすぐそこだった。

上りかけの状態だった太陽は、今は頭の真上でギラギラと輝き、生物の体力を奪う。

そんな中、緑が目に優しく映る。

期待に満ちた心で、辿り着いたオアシス。

「うわ、なんだこれ…入れないな…コレじゃ」

見つけたオアシスは、砂漠の真ん中にしては生えている植物が、街中の樹木の様だった。

私の曖昧な、砂漠の中のオアシスの知識は、熱に強いヤシ系の植物が生えているイメージだ。

この辺では違うのか?

(それに。)

私は、地面を見る。

(怪しい…。)

砂と緑の芝の境界線が、くっきりはっきりと分かれていた。

記憶を無くしてから、初めてのオアシスとはいえ、私でも怪しいとわかる。

普通のオアシスは、まばらに生えた植物が、水源に向かうにつれ、緑濃くなって、中心に泉…という具合に形成されている。…筈。

つまり、オアシスの始まりと砂漠の終わりは曖昧だ。

(だけど、ここは…。)

きっちり分かれた緑の絨毯、五歩で広葉樹林、更に蔦が巻きつき、外部からの訪問者を拒んでいる。

何かを隠すように、封ずるように密集する緑。

その造形は、作りモノめいていて。
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