water song(みずうた)
(…そうだ、この石。)

無意識の内に触っていた2つの石に、意識を向ける。

仕組みは誰にも判らないらしいが、この2つの石…透明のオクシィ石と青のハイドロ石…を2つ一緒に、杯などの入れ物に入れしばらくすると、入れ物は綺麗な水で満たされる。

これは、この世界の必需品。

この、街やオアシスの外は、砂漠や荒野ばかりが広がる世界では。

(おかしい…。)

微妙に霞がかった頭で考える。
自分の名前さえ思い出せないのに、生きる為に必要な記憶はある。

硬貨が銅で出来てる事や、水の確保の仕方、そんな事は思い出せるのだ。

どうやら、記憶が全く無い…というわけでは無いらしい。

思い出せないのは、自身に関する事…それのみ。

軽く頭を振ると、肩まで程の髪がフードからこぼれ落ちてきた。

赤茶けた髪を見て、違和感を覚えた。

(こんな色…だったか?)

青くなかったろうか?

…いや、確かこれがこの辺りの地域の一般的な色だ。

この色で問題ないのだ。
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