water song(みずうた)
(…だめだ。)

ここまで来たいと言ったのは、私だし。

“ここで逃げてはいけない…”と、呼ばれていたのと同じ方から声がする。

「いや。行く」

ガルンが、驚いた顔をした。

「行くって…だってリール、怖いんだろ、無理するな。」

ガルンの声が微かに震えているのに気が付く。

「ガルンも怖い?」

「いや…俺は…そうだな、リールが居なくなりそうな気になったから、奥に行くのが不安になった。」

ガルンは、私の事を考えて不安になっていた。

私は、私は…私の事を考えて不安になっていた。

とても恥ずかしくなった。

逃げようとした自分が。

「手、繋いでいて。そしたら何処にも行けない。」

「ああ。」

ガルンは私の手をキツく握りしめた。


オアシスを覆う蔦へと、ガルンと繋いでいない方の手を、そっと伸ばす。
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