water song(みずうた)
蔦に触れた指先から、蔦の意志が私に流れてきた。

『歌って』

「歌」

呟くと、また私の中で自動的に構成され、唇からメロディーが零れだす。

“聴け蔦揺らしの歌
奏でるはカインリール

揺れよ蔦、思いのままに
揺れよ蔦、風に吹かれて
揺れよ蔦、時には儘ならぬとも
揺れよ、揺れよ、心のままに
揺れよ、揺れよ、我のために
揺れよ、揺れよ、汝のために
揺れよ、揺れよ、世界を揺らせ”

歌い終わると蔦は揺れだし、道を開けた。

その中に入ると、オアシスは粗く編まれた蔦でドーム状に閉じられ、不思議な空間を形成している事がわかった。

心が凪いでいく。

さっきの不安は、一種のバリアだったのかも知れない。

「ふぅ…」

ため息をつくと、ガルンがぐっと手を握りしめてきた。

「大丈夫、なのか?」

「大丈夫。」

不安そうに琥珀の瞳が揺れた。

「やっぱり、リールの歌、何か力があるみたいだな」

(本当に、私の歌の効果で、道が出来たの?)

蔦に触った時聞こえたのは、誰の…何の意志か…。

さっきは蔦だと思ったけど。

「わからない」

ただ、呼び声が近くなった事はわかった。

「あっち…」
< 22 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop