water song(みずうた)
「そりゃリール、お前は記憶…」

ガルンの言葉を遮り、首をふる。

「無いのは自分の事。」

過去に聞いた事があったなら、知っている事なら思いだす。

命石や、銅貨の事が良い例だ。
ただ、知らない事は思い出せ無い。ムーンラック族の事…とか。


顎に手をやったガルンが、唸る。
「だとすると、リールがここに呼ばれたのは、世界神話を知る為か?誰も、今更、世界神話は語らない…から」

でも、何故わざわざ…。

「もしかしたら、リールの記憶喪失は、世界神話並みの事態…か?」

二人で乾いた笑いを浮かべる。
(ま、まさかね…。)

「ま、こうしてても仕方ないか。
成るようにしかならないってな。
いい加減、リールも上がれよ」

言われて、呆然と泉に立ち尽くしていた事に気づく。

日光が適度に遮られているのと、泉や木々のおかげで、この空間は、砂漠の日中の気温とは大違いで過ごし易い。

反面。

ぶるり、と体を震わす。

体がかなり冷えてきていた。

私は慌てて泉から出る。

服の裾を、膝あたりまでたくし上げ、絞る。

「お前肌白いなぁ。砂漠民で無いみたいだ。」

今まで自分の容姿や服装、肌の色なんて気にしていなかった。
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