water song(みずうた)
日が沈んでからオアシスを出たので、砂漠は日中より少し涼しくなってきていた。

サクサクと、先を歩き始めたガルンを慌てて追う。

ここ数日で、多少は砂漠の歩き方も分かってきたが、まだまだガルンには追いつけない。

置いていかれるような気になり、不安になった。

(そうだ、ガルンは命石が無いから、私と一緒に居たんだ。)

そうでなければ、こんな厄介でお荷物な私と旅をする理由がない。

「リール?
お前、また何かおかしな事、考えて無いか?その辺だろ、お前が不安がってたのは。」

ガルンは私の心を見抜いたように、そう声をかけ、手を差し出す。

その手をどうして良いのかわからず、ぼぉっと眺めていた。

すると、ガルンは乱暴に私の手をとり引いてくれた。

「ほら、早く行こうぜ。」

(ガルンに出会ってから、ガルンに頼りきりだな…。)

私より温度の高い手のひらを心地良く感じながら、ガルンに導かれていく。

ガルンが居なければ、今頃はきっと奴隷として売られていただろう。

(ガルンに何かお返しが出きると良いのに。)

何も出来ない自分を、今ほど恨めしく思ったことはない。

記憶があれば、何か出来る事もあったかも知れない…。
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