water song(みずうた)
サク、サク…。

沈黙の中響く砂音。

あそこを通る度、色々と気付かされる。

自分の矮小さや、これからの事。

そんな、無意識の内に忘れようとした事を。

街に着いたら、きっとガルンは私を置いて行くのだろう。

(街になんて、ずっと着かなければ良い。)

温かい手のひら。

守られている心地良い場所。

二人きりのこの場所では、ガルンは私しか見ない。

そんな独りよがりな思想は、あっさり砕かれる。

「お?あ、やったぞ、リール。街だ。見えるか?
あのオアシス見つけて良かったな、こっちまで来なければ、多分見つけられなかった。あの街、前に行った事があるトコだな…」

思ったより西に居たんだな。

ガルンのそんな呟きは、私の耳に入ってそのまま抜けていく。

ガルンが示した方には確かに街影があった。

蜃気楼、とかでは無さそうだ。

ぐらり。

一瞬、視界が揺れた気がした。

「あれ?どうした?リール?」

気が付くと私は、砂漠に膝を付いていた。

慌てて立ち上がろうとするが、力が入らない。
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