water song(みずうた)
02.街と理由と相棒

02-01.意識覚醒と宿屋

目を覚ますと、ベッドに横たわっていた。

新しくはないが、きちんと洗濯された、清潔な寝具。

寝たまま、瞳だけでぐるりと見回す。

簡素な机と椅子。

机の上には、灯りの消えたランプ。

それから盥(タライ)。

白いカーテンのかかった窓からは柔らかな光。

どうやらその光の加減から、朝のようだと判断する。

少し体を起こそうと身じろぎする。

額から濡れた布が落ちたが、それに構っていられなかった。

ベッドの脇に椅子があり、それに座った人物が、看病の途中で疲れたらしく、私の胸の辺りに半分身を横たえていたからだ。

キラキラしい朝の光が小麦色(微褐色)の柔らかそうな肌の顔を照らす。

光の粒が長い睫や、黒がかった銀の髪で遊び、果実のような唇からは、それが作り物で無いことを示す、呼気。

(その息もきっと…)

ガルンの人間の時の姿は、直視すると相変わらず心臓に悪い。
起きているときは、言動に紛れるが、寝ている時はまさに天使そのもの。

こっそりため息をもらす。

砂漠が広がる環境のせいか、そう寒くなる気候ではないとは言え、何もかけずにいたら風邪を引くだろう。

それに、ガルンの体制は起きた時に体が痛そうだ。
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