water song(みずうた)
階段を下りていくと、客の前に皿を置いた宿屋の人らしき女性と目が合う。

「あ、お嬢さん元気になったのかね?」

頷くと女性は、ニッコリと笑った。

「それは何より。さ、お嬢さんも席に座って、ウチのご飯、食べなよ!」

私は驚き、首をふる。

「どうしたんだい?遠慮はいらないよ!」

「だ、だって私、お金…」

「えっ?何言ってんだい、お連れさんがもう支払い済みだよ、宿泊した人には、朝食もサービスさね。」

戸惑っている私に痺れを切らし、女性は空いていた適当な席に私を座らせる。

「お嬢さん、もしかして仕事が欲しいのかい?
それなら後で、ウチの宿屋の仕事を手伝っとくれよ。
それより、今は、ほらほら、座った座った。
ちょっと待ってな、すぐ食べ物、持って来るから。
お嬢さん、細いし、しっかり食べなきゃまた倒れるよ!」

女性は、私が唖然としている間に、立て板に水のごとくまくし立て、それから恐らく調理場のある食堂の奥の方へと去って行った。
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