water song(みずうた)
酒臭い息で此方に振り向かれ、思わず右ストレートを繰り出す私が居た。

気が付くと、酔っ払いは、酒場の床に倒れていた。

「リール、酔っ払い…」

ガルンの呆れたような、楽しそうな声が響いた。

「わ、私…」

くくっ、と楽しそうに笑うガルン。

「俺がやりたかったのに残念だ。」

茫然と立ったままだった私の横に来て、肩を軽く叩く。

「さて、ここじゃもう、食事する気分になれないから、仕方ねぇ。宿屋の食堂にでも行くか。」

ガルンはさり気なく酔っ払いを蹴り飛ばし、道を空け、勘定を払いに行った。

殴り飛ばした私に何を言える訳もなく、ボンヤリとガルンが戻るのを待った。

今更ながら、少し右手がヒリヒリした。
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