water song(みずうた)
「で、いつ出発するね?」

「お前には教えない。」

「ひ、酷い…ガルンさん僕を弄んだのね」

ゼルドさんはハンカチを口にくわえ、本当に弄ばれた女性のような仕草でガルンを見た。

(え、演技派だ…)

ガルンはうんざりした表情で、異様に近づいていたゼルドさんの顔を押しやる。

ゼルドさんは、はははっと笑い、ハンカチを懐に仕舞った。

「ま、いつ出発しようと構わないね。僕は付いて行くだけ。
僕をまけると思ったら大間違いね。」

ゼルドさんは、自分で持ってきた杯をテーブルの上から取り上げ、中身を一口飲んだ。

「それに、僕の本命は“リール”さんね。」

さっきまでのフザケていた時とは全く異なる声音(コワネ)で告げたあと、パチリと私にウインクしてきた。

その仕草に、思わずドキリとしたが、私は気付かなかったふりをする事にする。

ちろり。

ガルンが此方をみて、何故だか、浮気を奥さんに見つかった主人の気分になった。

いや、実際に浮気した人の心情は解らないのだが。

私は、話を逸らす事にした。

「ガルン」

「ん?なんだ?」

不機嫌さが滲み出た声で、ガルンは答える。
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