water song(みずうた)
「大丈夫…なの?」

「ムーンラック族は、普通の人間より頑丈だって話だぜ。
でもコイツは一番体力のない兎系だったのかもな。
兎系は他より耳が良いらしいが、体力はないらしいからな」

男は、立ち上がって牢に近づき、懐から出した鍵で扉を開けた。

バサリ。

突然の音に驚き、そちらを見ると荷馬車の覆いが開けられた所だった。

「お頭ぁ〜そろそろ休憩にしま「あ、バカヤロウ!」…」

さっきとは打って変わった鋭い調子で、盗賊の男の最初から居た方…ええぃ、ややこしい。お頭(仮)が怒鳴った。

それもそのはず。

開けられた覆いからは月明かりが差し込み、それは牢にまで届いていた。

しかも、牢は鍵が外され、お頭(仮)は、半身牢の中。

変化は、数秒…だった。

弱々しく横たわった男の体は、ザワリと端から銀色の毛並みに変わり、見る間に大体三倍以上は大きくなった。

ノソリ。

頭を牢の天井にぶつけないように、起き上がったソレには、もう元の面影は無い。

お頭(仮)が懐へと手を入れる。

その機敏な動きは確かにお頭と呼ぶに相応しいものに思えた。
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