water song(みずうた)
「ゼルドさん…」

「あ、てめぇ出やがったな」

いつの間にか後ろに立っていたゼルドさんからバッと飛び退き、警戒態勢を取るガルン。

その様はまるで毛を逆立てた猫のようで、ガルンを好んでからかうゼルドさんの気持ちが解らないでもない。

「おはよう、ガルンさん、リールさん。」

フフフと、怪しく微笑むゼルドさん。

「おはようございます」

ぺこりとお辞儀する私と、ケッとそっぽを向くガルン。

「で、水族館て…」

聞きかけた私の言葉を遮るガルン。

「止めろ、リール。こんなヤツに聞くより係の人に聞く方が…」

係の人の方を見ると、別の人と話し中だった。

「やっぱり聞くより、実際に見た方が早いよな。」

言いつつガルンは、私の手を引き、チケット売り場と思(オボ)しき場所へとスタスタ向かう。

「大人2枚。」

「百ダリです。」

ガルンは財布から硬貨を取り出し渡す。
受け取ったチケットは、青い背景に極彩色の魚が描かれていた。

「綺麗だ」

受け取ったチケットをかざして喜ぶと、ガルンが何故かほんのり赤い顔になった。

「大人1枚お願いね、お姉さん」

「はい、五十ダリです」
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