water song(みずうた)

03-03.呼び声と蒼然の心

ひらひらと、極彩色の魚達が水槽を漂っている。

そっと手を触れたガラスは、ひんやりしていて気持ち良かった。

養殖場より大量の水が、ガラスの向こうを満たす。

敷き詰められた、命石がその源であるのは間違い無い。

「あの泉みたいだな、こんなに命石があるの…」

「うん…」

上の空で相槌。

ひたすらに、ザワザワした気分で。

ぼんやりと、応えた事すら曖昧に。

ただ、心の不安にたゆとう。

水…のせい?

ゆらゆらと染まる景色が落ち着かない。

忘れている何かが、膜を破って、悪夢へ私を誘う(イザナウ)様な…。

記憶が無い事が、いつもより更に厭(イト)わしい。

私は、何処へ行って何をすれば良いのか。

気持ちが焦り出す。

「うわ、すげぇ〜!」

ガルンの大きな声に、乖離(カイリ)していた現実へと目を向ける。

私の指先の触れている、ガラスの向こう側に、色とりどりの水魚が集結していた。

思わずガラスから指先を離す。

すると、ザァーっとばかりに散る水魚達。

「なぁ、もう一回指付けるとどうなるんだ?」

言われてガラスに触れる。

…何も起こらなかった。

水魚達は、優雅に泳ぐ。
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