water song(みずうた)
「なんだ。偶然…か」

つまらないな。

言われて、何となくムっとした。

(呼んでみたらどうなんだろ?)

ふと思い付いて、早速実行してみる。

(おいで…)

声が聞こえたように、水魚がピクッと動いた。

もう一度、今度は真剣に念じる。

(おいで…)

ガラスの向こうに、先程より沢山の水魚が集まった。

『何の用?』とばかりに、数十の瞳に注目され、怖じ気づく。

「あ、ご、ごめん、何でもない…」

呟いて指先をガラスから離すと、『用も無いのに呼ばないでよね』と言われた気がした。


「あ、此処に居たんね」

賑やかな声と共に、ゼルドさんがやってきた。

後ろから他のお客さんたちも来て、水槽の中の極彩色の水魚達に歓声をあげる。

ガルンと私(と水魚)しか居なかった静かな空間に、活気が戻った。

ぼーっとこちらを見ていたガルンが、ハッとして、私の手を掴み、「逃げるぞ」言ってから、ゼルドさんから逃れるべく、走り出した。
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