water song(みずうた)
しかし、ムーンラック族側も負けていない。

月明かりを反射して金色に輝く瞳が、お頭(仮)を射抜いた…と思った次の瞬間。

ガコッ。

鈍い音と共に、お頭(仮)が牢の扉と共に吹き飛ぶ。

お頭(仮)は、「がはっ」と呻き声をあげた。

歪んだ牢から、巨体が出る。

兎…なんて言ったのは誰だ?

その姿は間違いなく狼。

手下A(仮)が、ヒッと喉の奥で悲鳴をあげた。

そちらを一瞥した狼男は、ユルリとした動きで腕をあげる。

「殺されたくなくば、そこをどけ。」

低く、嗄(シワガ)れた声。

手下A(仮)は、壊れた首振り人形のようにガクガクとした動きで何度も頷く。

抜けた腰をズルズル引きずりながらも移動した。

はっと、私は我に返った。

私も、ここから連れて行ってもらえるかもしれない。

「ま、待って!」

狼男は怪訝そうに(実際は毛に被われて、どんな表情かははっきりしない)私を見た。

きつい眼光に怯みそうになりながらも、言葉を紡ぐ。

「わ、私も連れて行って!」

このままここにいて、奴隷になるのはイヤだ。

必死な私の願いが通じたのか、狼男は頷いた。

「良いだろう」

体に腕を延ばされて、ビクリとする。
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