water song(みずうた)
私の知らない歌を『歌って』といった声が歌いだした。

(最初から、自分で歌えば良いのに!)

命石同士を、無理やりこすりつけた様な不快な音が、歌を邪魔する。

(頭、痛い)

砂漠で一人、気が付いた直後と、同種の頭痛。

自分の根本を、無理やり引きちぎられ、力の限り歪まされている嫌悪感。

噛み合わない歯車を回す軋み。

頭と身体に響く、不協和音。

何も、考えられなくなる。

耐え切れず、その場に膝をつく。

肘まで、水に浸かる。

頭に響く歌声が、若干鮮明になった様だ。

頭を抱えたかったが、石版から手が離せない。

「リールさん!?」

異変を感じたセリの、焦りを含んだ声が重なる。

しばらくして、途切れた歌。

それに気付いた時。

自分の唇が、頭の中で響いていたのと同じ旋律で、勝手に歌を紡ぎ出す。

頭痛は、止まない。

視界が次第に不鮮明になってきている。

意識を保つのが億劫だ。

自分の唇が止まってから、それが歌の終わりと気付く。

そして、暗転。

ただ柔らかな体が、私を支えてくれたのだけを感じた。
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