water song(みずうた)
「よし、行くぞ」

「街長(マチオサ)、リールさんをどうするのです!」

街長と呼ばれた、私を横抱きにしている男は、警備兵にセリを放すように言ってから答える。

「しばらくは、我が屋敷で賓客として滞在していただく」

言葉に有無を言わせない響きが宿っている。

「彼女に会いたいなら、訪ねて来るがいい。外には出せないが、監視付きで良ければ、茶は出すぞ」

ガクリとセリが膝をつく。

「セリ、私は大丈夫」

横抱きにされた、なんともしまらない状態ながら、セリに心配させるまいと、声をかける。

「リールさん…行きますから、あたし、絶対会いに行きますから…」

セリの言葉に、思わず目頭が熱くなる。

「では、今度こそ行くぞ」

街長は、私を横に抱えたまま、その家…後で知ったがセリの家だった…を後にした。

警備兵達が、街長に続く。
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