教師失格☆恋事情
急に暗くなった私の視界に先生が飛び込んできた。
「…誰だよ、こんな不安定な場所に道具箱置きやがって…ケガしなかったか?」
「……」
「佐山?」
「…大丈夫です」
「大丈夫じゃないだろ…、血がでてるじゃねぇか」
「これくらい平気です。」
「行くぞ」
腕を引かれて立ち上がると、好奇に満ちた視線が集まる。
周りの視線なんかお構い無しに、私の手を引き歩く先生を見ながら、
「先生、私一人で大丈夫ですから」
そう言いながら、言葉とは反対に心が反応する。
繋がる手が嬉しいって、先生が好きだっていう気持ちが反応する。
きっと先生は、私じゃなくても同じことするんだよね。
でも…止められない。
先生が欲しいよ。
下校時刻の廊下で繋がってる私と先生の手を見たら、先生の特別になれるんじゃないかって思っちゃうよ…
無意識に手を握り返したら、先生の肩が揺れた。
私の気持ちが伝わったみたいに。
…保健室がもっと遠ければいいのに
角を曲がれば見えるその部屋の前に人影が見えた。
二人きりにはなれないことが残念だなんて思ったら、欲張りすぎだ。
「失礼します」
私の手を引きドアを開けた先生
「怪我人っすか?今、保健のおばちゃんいないっすよ」
向こうにいた人影が、ゆっくり振り返り、現実に引き戻された。
「紀之っ…、」