Bitter Chocolate
 「兄ちゃん、チョコ貰ってないの?」

 「…うるせぇな」



 当日が休みの日なら前日に貰ってくる、それが普通でしょ?と言わんばかりの愚妹・美穂の視線を俺は読みかけのジャンプで遮った。

 そのぞんざいな扱いに呆れた美穂は大人しく自分の部屋に戻っていく。

 
 部屋の時計を見れば14日、―――バレンタインデーも残すところ10分をきったところだった。

 勿論、美穂の追及通り、前日の金曜日にも貰っていない。

 そして今日は一日中家に引きこもり。

 誰かがチョコを持って訪れるというシチュエーションも無ければ家族以外の人間に会ってもいない。


 完璧に戦果はゼロだった。
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